Apr 20, 2024

姉の涙 (Japanese of Mar 10 post)

 私が生まれたとき、姉が私のために涙を流してくれたと聞いています。

姉が生まれた数か月後、母はチフスのために入院し、次の年も、また病院に行きました。「心配しなくてもいいの。マミー(ママ)は病気じゃないから。今度帰って来るとき、特別なお土産を持ってくるからね。」

その日、ドアによちよち歩いていくと、ダディー(パパ)とマミーは、玄関に立って、2人ともとっても嬉しそう。だけど、家で楽しく待っていた娘より、マミーの持っている小さいものを見て笑っているのです。あれ・・・

その小さいものを「智子」と呼んでいました。そしてその「智子」をベビーベッドに寝かせたのです。

「これが、おみやげ?」と里子ちゃんは思いました。「この赤ちゃんに、ダディーも、マミーも、ベッドも、うばわれてしまった・・・」親が部屋に帰って来たとき、里子ちゃんのほっぺに涙がポロポロ流れています。

あら、あら、あら。

マミーは、すぐ里子ちゃんに話しかけました。

「ねえ、かわいいでしょう。里子の新しい妹なのよ。まだまだ小さい赤ちゃんだから、う~んと愛してあげないと。里子はいいおねえさんになってあげられるでしょう。」

ベッドに寝ている小さな赤ちゃんが、里子ちゃんの目に、かわいくなってきて、涙は少しずつ笑顔に変わりました。

「智子ちゃん。私の妹。」

里子、泣かせてしまって、ごめんね。そんなつもりは、なかったんだけど。

次の年に、もうひとりの妹が生まれた時、親が私を準備する必要はありませんでした。姉が既に私を訓練してくれたのです。

「愛子ちゃんはね、私たちのかわいい、かわいい妹なのよ。でも、まだ小っちゃいあかちゃんだから、うーんと愛してあげないと。智子、いいお姉ちゃんしてあげてね。」

私は、愛子に泣かされませんでした。(かえって、いじめちゃったかもしれません!)