6 ハワイ港で
暖かく見送りに来てくれた家族・友だち |
7 Travel Agent - その2
船は岸から離れ、私はデッキで広大な海をながめていました。
もう一人の船客が波の方を指して言いました。「あれは何であるか、分かりますか。」出港した時からタグボートが船をグルグル回っているのに気が付いていました。「さあ。何でしょう。」
「サブチェーサーって聞いたことありますか。」
サブチェーサー。潜水艦追撃線。頑丈な引き船が特別に武装されていたのです。目的地に着くまで客船はこのサブチェーサーに守られることになっていたのです。
危険何一つに会わず、無事サンフランシスコに着きました。
カリフォルニア州に着いた時、出迎えてくれる人はいませんでした。そういうことが必要だと分からなかったので、誰にも連絡していなかったのです。もちろん、宿泊のことも何も考えていませんでした。
主はそういうことをよくしっていました。特別歓迎会、連邦検察局(FBIと呼ぶ)が私を迎えに来るようにと、準備してくれたのです。
戦争のため、日本人はアメリカの西海岸にいてはいけないことになっていました。内陸に移動されたり、捕虜収容所に入れられたりしていたのですが、この日系人である私は堂々とカリフォルニア州に来ています。
船がドックに入った時、FBIが船に乗り込み、私たち2世数人を近くのホテルまで連れて行きました。
アメリカでの旅の目的について尋問されました。
「名前は」
「金城君子。」
「行先」
「イリノイ州。」
「目的」
「神学校で宣教師になるための訓練をうけたいと思って。」
「なるほど。それで、いつ出発しますか。」
「わかりません。乗車券は買っていません。」
「えーっ?」うめき声を出しました。「戦争中の列車の使い方は聞いていないのですか。兵士を移動するため、一般市民は少なくて3カ月前に予約をとらなければならないのですよ。」
「全然聞いていませんでした。」
少し話が止まったと思ったら、電話を取ってこう言っています。「明日、シカゴ行きの列車、女性一人の席をあけてくれ。」
それだけでした。
宿泊のことを考える必要はなかったのです。主がホテルをちゃんと用意してくださいました。列車の予約は3か月前にとる必要はなかったのです。主が電話一本で席を開けてくださいました。
翌日一等車で女性FBIに紹介されました。「あなたのパーソナル・エスコートです。」と、彼女は言いました。「列車旅中何か必要があったら、すぐ言ってください。」この田舎者には特別な助けが必要だと思われていたに違いありません。日系人の私が行くべき所に着くことを確かめる必要があったのでしょう。
とにかく、シカゴ市に近づくと、車掌が私のところに来ました。
「あなたの目的地はシカゴ市の郊外だと聞いています。長距離列車は大きい市以外止まらないことになっていますけれど、あなたは一等乗客ですから、今回は特別停車することにします。荷物をとって、降りる用意をしてください。」
そこで降りたのは私一人でした。列車が離れていき、私はあたりを見回しました。ついに、無事に目的地に着いたと思っても・・・
神学校は、一体どこなのでしょう。少しもわかりませんでした。
線路の向こう側にタクシー乗り場があって、タクシー一台が客を待っています。
「神学校までお願いします。」と、言って車に乗りました。
少ししたら話し始めました。
「お嬢さん、どこからですか。」
「ハワイ。」
「そうですか。こんなに遠くまで。何のために?」
「宣教師になるための勉強をしたいのです。」
「君子さんですね。」
「・・・」初対面の人が、どうして私の名前を知っているのでしょう。あっ、わかった!
「もしかしたら、息子さんは、ハワイの軍港のTim Whitmer?」
そうだったのです。宣教師になりたい日系人が神学校で学びに行くという手紙が数日前届いていたのです。
「だから、君子さんが来るのを待っていたのです。」
このタクシー運転手は神学校に送ってくれただけではありません。私は入学希望の手紙を学校に送っていなかったので、寮はすでにいっぱいになっていました。住む所を探したり、学費を払うためのアルバイトを見つけてくれたりしました。
戦争状況ー人間的考えによるとマイナスの原因ーは神様の力を証明しただけです。潜水艦追跡戦、連邦検察局、ホテルと列車の予約、時刻表にのっていなかった停止、一人のタクシー運転手。神様は私の必要に合わせてこの様なことをしてくださいました。
主に従う者は、約束されています。
わたしはあなたに目を留めて、助言を与えよう。詩篇32:8後半
この様な神様に私は命をかけて信頼できるのです。